ゆるり徒然、薄明かり

空想めいた日々。孤独の中にも光を探す。のんびりと日常や思考を綴るブログ。

土砂降りパラダイム

今日は人と話す予定があった。空は晴れているけど雨が降っている妙な天気。狐の嫁入りだ。

虹が出てるかと思って太陽の反対側をチラチラ振り返りながら歩いたけど、残念ながら見つける事はできなかった。点々と濡れた地面が夕日をてらてら反射させて、金箔を散りばめたみたいに見えた。ああ綺麗だな、と思って少し気分が良かった。

そのうち土砂降りになってきて、大人は鬱陶しそうに足早に通り過ぎ、子供は傘もささずにはしゃいで走り回る。それを見ていると数年前の風景が蘇った。

その日もひどい雨だった。いつ頃だったかはっきりしない。もうかなり前だったと思う。バケツをひっくり返したような、という雨を初体験した日。目の前が真っ白に霞みがかるほどとんでもない勢いの雨で、しかも目の前で雨が急に強くなったり弱くなったりを繰り返していて、まるで誰かが水道をひねったり閉めたりしてるみたいな異常な天気だった。

目の前で女子学生らがずぶ濡れになりながらはしゃいで歓声をあげていた。だけど私はぐったりとして、よれよれで、喉に魚の骨が突き刺さったみたいな気持ちを抱えてふらふらと歩いていた。何があったか説明するのは難しいけど、失恋したような気分だった。衝撃を受けていた。やけくそになってその勢いで帰りに気を紛らわすため中古ゲームを買った。

タイトルは「ラストウィンドウ 真夜中の約束」。前作の「ウィッシュルーム 天使の記憶」というゲームがとてもよかったのだ。寂れたホテルに集まる様々な思惑の人々。泊まると願いが叶うという部屋。隠し事や悪事。ハードボイルドな世界観や主人公が魅力的で、切なくなったり爽やかな気持ちになったりした。夏になると時々またやってみたくなる。とても良作なのでDSのゲームできる環境ある人はぜひ。ただ続編のラストウィンドウは正直微妙だったけど。……って話逸れたな。

その後人と話を済ませ、再び外へ出ると土砂降りが本気を出してきていた。空も魔王に支配でもされたんかなというようなどんより色で、雨も悪くないなと思っていたさっきの気持ちはどこかへ飛んで行ってしまった。降る前に出たのでサンダルを履いてきてしまい、足の裏がじっとりとして気持ち悪い。ちょっと不機嫌になって、さっさと帰ろうと思った。だけど勢いの強い雨の中を歩くのがだるくなって店先のひさしの前に逃れた時、気が変わった。本屋にでも寄って、雨の中を歩く覚悟が決まるまで時間を潰そう。

本屋の中はあまりにも冷えていた。冷凍食品売り場みたいだ。立ち読みするな、さっさと買って出てけと言わんばかりだ。人の愛、という言葉の対義語は?と問われたら、本屋の冷房の効き具合、と答えたくなるほどに限りなく愛を感じない。反骨精神の強い私は本屋に長期滞在をした。本屋とは本を買うところではない、立ち読みをするところなのだ(※個人の偏った見解です)

漫画のコーナーに行くと、最近亡くなった漫画家の新刊が出ていた。発売したばかりなのに、それを描いた人はもういないなんて不思議だ。少し読んだことのある作品だったから、もう永遠に続きが出ることも完結することもないんだなと思って、少し悲しかった。

それから、夫と死別した妻のエッセイ漫画と、人格がいくつもある人が自分のことについて綴った本を読んだ。共感できることも知らないこともあった。

傷付いても人はどうにか生きて行こうとするものなんだな。その中で何かしようとするものなんだな。私は何もできていない。今日もうまく話せなかったし、がっかりしたり劣等感に囚われたりしていた。自分のことについて考えたくなさすぎて、作り出した想像を本当と思い込んできたのかもしれない。

何かひとつ言葉にすれば、砂の城に水をかけるみたいに良くないものがとめどなくとろけて溢れ出すだろう。口を閉ざすべきなのかな。とかなんとかいろいろ、思考が浮かんでは消え、また浮かんでは消え、シャボン玉みたいに一瞬ではじけた。いつも刹那を生きている。

外へ出ると、少し降りがマシになっていた。想像の中で誰かと話したり、物語を考えたりしながら帰途についた。最近はよく、挫・人間というバンドの曲を聴きながら歩いている。なんとなくロックな気分だ。

今日もよく歩いた。ちゃんと疲れることができた。疲れると頑張った感があって安心する。そして明日も予定です。では。